【人材不足の問題】
介護事業は人手で仕事をする労働集約型産業ですので、事業を維持するには人材は欠かせません。ところが、介護業界の人材の現状を見ると、募集をしても来ない、採用をしてもすぐに辞めると言って、人材不足に悩む事業所が多くあります。
2014年現在、介護労働を行っている人は約100万人。厚生労働省はこれに対して140万~160万人必要という見解を発表しています。つまり現段階で50万人前後が不足している計算になります。
特に離職率の高さは他の産業に比べても類を見ない数字です。介護の仕事に就く人で1年以内に離職する人の割合は35.2%、3年以内に離職する人は79.2%となっています。
この最大の要因は給与の低さにあります。ただ、介護報酬が定められている以上、給与水準を上げたくても限界があるのが現状です。
そんな中、介護保険以外のサービスに取り組み、介護保険との複合サービスを展開し、介護保険制度の激変に振り回されないビジネスモデルを確立し利益を上げている事業所もあります。
また、外国人労働者を積極的に活用している事業所もあります。日本は現在介護職を目指す外国人研修生について、経済連携協定(EPA)を結んでいるインドネシア、フィリピン、ベトナムに限定して受け入れを行っています(この場合の在留資格は法務大臣が指定する「特定活動」になります)ので、その制度を利用しているのです。
これに対しては、「日本語が不自由な外国人が介護現場でケアできるのか」といった意見があるのも事実ですが、一方で「実際に担当させてみると実に真面目で本当に優しい良いケアをしてくれる」といった声もあります。
例えば、認知症の方であると入浴時に暴れたり文句を言ったりすることもあるそうですが、このようなときに日本人スタッフであると「はい、だめですよ入らなきゃ」とお説教のような口調になりがちですが、外国人だと言葉が分からないので、何を言われてもニコニコしながら入浴介助をするのでトラブルにならないといった例もあります。
また、せっかく就職した人が長続きしないというのも深刻な問題ですが、昔流の叱って育てる指導は通用しなくなっているように感じます。叱られて指導を受けた我々の世代からすると違和感はあるのですが、やはりこれからは‘叱って育てる’から‘褒めて育てる’、‘育つまでじっくり見守る’に変えていくべきなのかもしれません。
人の悪い面を発見するのは簡単な割に、良い面を発見するのは実に大変なことだと思いますが、これを実践してスタッフの定着率が高くなったという事業所もあります。中には採用に当たっては、敢えて現場の人に決めさせている事業所もあります。これには理由があり、上の人だけで決めたら、「こんな人は使えない。こんな人を採用するほうが悪い。」という感情を持ち、育成に責任を持たなくなってしまうことはありがちですが、逆に自らの決断で採用したのであれば、最後まで諦めずに育てる覚悟ができ、人を見切らず育て上げる組織ができあがるからだそうです。なるほどと思いました。
これから10年後には団塊の世代の方々が75歳を迎えられるわけですが、この世代の方々は昔と違ってアクティブに外出される方が多いと思います。子供や孫と遊ぶより自身が楽しめる時間を求めています。そういった方々に対して昔ながらの介護は通用しません。そのようなときにより柔軟な発想ができる若い方々も今後は必要になるかもしれません。
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